120122
旅先でのあたたかい親切
妻の同窓会で10数年ぶりに訪れた彼女の故郷の町並みはずいぶん変わり、かつて幾度も訪れてよく知っているはずの通りも違った町を走っているような錯覚に 陥るほどでした。
また、以前は福岡の久留米市から九州を横断して大分の日田市から耶馬渓を通り、中津市まで出て、それから10号線を北上して福岡の豊前市に向かっていましたが、 今回は日田から耶馬渓を通り、そこから北九州に向かう新しくできた10号線バイパスに向けて走り、中津に入ることなく、バイパス経由で直接豊前市に入る事が 出来ました。
さて、妻の故郷での同窓会も無事終わり、心配して準備していたホッカイロを使う程の寒さに合う事もなく、心地よい暖かい日差しの中、帰途につきました。そして、 帰りも10号線のバイパスを利用して、直接耶馬渓を目指しました。
しかし、バイパスから耶馬渓に抜ける道に入るのに、道を間違えて違うところから入ってしまったようで、どうも来るときと景色が違います。それでも、田舎道で そんなにたくさん道があるわけではありません。耶馬渓の方向を目指していたらいつか見覚えのある道に出るはずだと信じて走り続けました。
だが、一向に見覚えのある景色に出会えないばかりか、益々知らないところに入り込んで行っているみたいでどんどん心細くなってきました。そこでだれか見かけたら 耶馬渓に出る道を尋ねてみようと二人で話しました。
車を走らせていると田んぼの間の小さな道を、犬を連れて熊手を持ったおじさんが歩いているのが見えました。「ええっ、小さなシャベルとビニール袋を手に持って 犬を連れて歩く人はよく見かけますが、熊手を担いで犬を散歩させてるなんて・・・、あの人で大丈夫?」と思いましたが、他に誰もいないので、その人に聞いてみる ことにしました。
「すみません。耶馬渓に抜ける道を教えて下さい。」と車の中から尋ねました。すると熊手のおじさんは「う~ん。…」としばらく考え込んで黙ったまま、すぐ答えが 返ってきません。「あれっ、よく分からないのかな。」と思ってじっと待っていると、おもむろに答え始めました。
「え~っと、この道をまっすぐ進んで少し行くと、少し大きな道に突き当ります。それを右手に曲がって進むと3差路がありますので、それの左側の道に入り、また しばらく進むとまた3差路がありますので、そこでも左側の道に入り、それをまっすぐ進むとトンネルがあります。そこを抜けてまっすぐ進むと耶馬渓に入る道に出ます。 そこを右に進んで下さい。」
おじさんがすぐ答えなかったのは、道を知らない私たちが迷わずに行けるように一度自分の頭の中でこれから走る道を通ってみて、それから分かりやすく教えて くれたのだなと思いました。しかし、そうは思いながらもあの不思議ないでたちに半信半疑ながら車を走らせました。
言われた通り、3差路を左、3差路を左と走らせていると、両側に木々がうっそうと茂った小さな道に入り込みました。また間違ったのかなと少し不安になって きました。すると、突然木々の間に薄気味悪い小さなトンネルが現れました。普通だったらあまり通り抜けたくないような照明もない薄暗いトンネルでしたが、 おじさんが言ってたのはこのトンネルだったのかなと思い、言われたようにそこを抜けて行きました。そして、しばらく走っていると耶馬渓への見覚えのある道が前方に 見えてきたのです。その時の嬉しさは譬えようがありません。
私と妻はおじさんの親切に感動し、心から感謝しました。もしできることならもう一度前の所まで引き返して、おじさんの手を取って「ありがとう。」とお礼を 言いたいほどでした。妻も同じように言っていました。でも、また迷うかもしれないので、二人でおじさんの親切に感謝し、祝福を祈りながら耶馬渓に向けて車を 走らせました。
愛は親切です。Ⅰコリント13:4
お互いに親切にし、心の優しい人となり、…なさい。エペソ4:32