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120226

餓死する社会

先日、さいたま市で60代の夫婦と30代の息子さんが餓死していたのが見つかりました。電気とガスが止められ、現金も底を尽いていたようで、布団に寝たままの状態で 亡くなっていた3人の枕元にはそれぞれ水の入ったペットボトルが置いてあったという事でした。たぶん3人共食べ物がなくなり最後は水を飲みながら死を待っていたと いうことでしょう。

世界でも最も豊かな国の一つである日本で近頃生活貧困者のこのような飢餓による死が報道されることが多くなってきました。豊かな日本の片隅で、貧しさから電気が 止められ、寒さに耐えられなくて冬の間になくなられる老人が増えて来ているというニュースも流れました。この豊かになった日本社会に今一体何が起こっているの だろうかと考えさせられます。

私の小さい頃、今から50~60年前は終戦後で皆一様に貧しい生活を強いられていましたが、餓死する人はいなかったように思います。高給は望めなくても なにがしかの仕事にありつけ、最低限食べて行くことは可能だったのではなかったかと思います。

このようなことを考えていると、以前聞いた一つの出来事が思い出されました。それは確か次のようなお話だったと思います。カンボジアの農業風景を見られたある 日本人が、沢山の労働力を必要とする非能率的な作業を改善してあげようと、耕運機、稲刈り機等の農業機械をプレゼントしました。

しかし、1年ほどして彼らの農業がどのように変わったかを見に行った日本人はそこで信じられない光景を目にします。プレゼントされた農業機械は片隅に追い やられて、彼らは相変わらず非能率的な手作業の畑仕事を続けているのです。日本人が「機械の使用法が分からないのか。」と聞いてみると、そうではなく彼らは 大変でも、非生産的でもみんなで助け合って仕事をすることの方を選んだのだという事だったのです。

日本は農業に限らず、あらゆる分野で機械化が進み少ない人数でより多くの生産量を得ることが出来るようになってきました。近年の工業機械の進歩には目を見張る ものがありますが、一方そのことで人手が要らなくなり、仕事にあぶれる人を生み出したのではないかと思います。

また、効率化を進めないとグローバル化の波の中で競争に打ち勝つことが出来なくなるので、さらにさらに効率化を進めざる得なくなってしまった現実もあるように 思います。そして、最終的には競争に勝った資金力や能力のある企業のみが勝ち残り、他の企業は淘汰されて来たのではないかと思います。

このグローバル化の波はさらに強さを増し、国内だけでなく世界規模で広がっています。今、日本でTPP[環太平洋戦略的経済連携協定]問題、つまり環太平洋の 国々における競争政策を含む、自由貿易協定について、今どうすべきか議論伯仲しています。

日本と同じく資源に乏しい貿易立国の韓国がいち早くアメリカやヨーロッパの国々とFTA[2国間自由貿易協定]を結んで、電化製品等の輸出を飛躍的に伸ばしており, 日本も早くTPP、FTA等、外国との自由協定を結ばないと自由競争に負けてしまうと危機感さえ持たれています。

ある意味このグローバル化の波の中では致し方ないことかもしれません。輸出立国の日本は輸出企業に力を入れ、輸出を増やしていくことが大切なことなのかもしれ ませんが、しかし、輸出を飛躍的に伸ばしている韓国では、思ったほど雇用が増えることはなく、一部の輸出企業のみが潤っているという現実があるやに聞きました。

世界のグローバル化の波はますます貧富の差を生みだし、豊かな国においてさえ、今までは考えられなかった餓死者を生み出してしまう社会を作り出してしまって いるのではないかと心配しています。

あなたがたの土地の収穫を刈り入れるとき、あなたは刈るときに、畑の隅まで刈ってはならない。あなたの収穫の落ち穂も集めては ならない。貧しい者と在留異国人のために、それらを残しておかなければならない。わたしはあなたがたの神、主である。レビ記23:22

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