040502
伯父の告別式
先日、父の兄にあたる伯父さんの告別式がザビエル教会で行われました。 数えで98歳という長寿を全うしての召天でした。
告別式はカトリック神父3人と総合司会の4人によって、1時間30分の間、 おごそかに粛々と進められました。
私たちプロテスタントの告別式とはずいぶん趣が違い、少しびっくりさせられましたが、 他の宗教のような告別式独特の暗さはなく、時々歌われる賛美歌等により、そこでは 天国に送り出す喜びさえ感じられました。
式の間中、伯父さんの人生のことがいろいろ思い出されました。それは、伯父さんが 78歳のとき脳卒中で倒れ、ベッドの中の人になったとき、私に向かって「洋明君、 君は僕みたいな人生をどう思うかね」と聞かれた事があったからです。
伯父さんは早稲田大学を卒業後、ある有名デパートに勤めておられましたが、 戦時中鹿児島に帰ってこられ、終戦後鹿児島のデパートに勤務するようになりました。
真面目で有能な伯父はそこでも、能力を認められ、最後は関連会社の社長を歴任されました。 仕事一途に生きてこられた伯父が突然倒れ、ベッドの中で自分の人生を振り返っておられた時、 私に語りかけられた言葉が、先の「君は僕みたいな人生をどう思うかね」だったと思います。
一般的には、社会で認められ尊敬され、立派な家庭を築かれ豊かな生活をも手に入れ、 申し分ない人生に思われました。しかし、寝たきりの生活を余儀なくされた時、それまで 伯父が人生をかけて築き上げてこられたこれらのものが、音を立てて崩れ落ちていくのを 感じられたのではないかと思いました。
会社で認められ、尊敬されている伯父のもとに、入院当初はたくさんの方々が お見舞いに訪れました。しかし、再び職場復帰の可能性がなくなった伯父の病室からは 潮が引くように人々がいなくなっていきました。そして、以後病院でベッドに寝て おられる伯父は、看護婦さんたちにも、ただの寝たきりの老人でしかなくなったのです。
しばらくして伯父が病床で洗礼を受けられたという知らせを受けました。伯父はベッドの中で、 人生を省み、そして人生で最も大切なものを得られたのだと感謝しました。
中東に大帝国を築いたソロモン王は、その偉大な権力のゆえに栄華を極めたといわれました。 彼は、偉大な知恵者であり、知識を民に教え、思索し、探求し、多くの箴言をまとめました。
また彼は、その卓越した知恵と熱心によって多くの事業をなし、彼の時代には銀は値打ちが なかったといわれるほどの莫大な財を蓄えました。
しかし、彼はそれらの労苦の一切が風を捉えるようなものだったといい、人生で最も 大事なことは自分の創り主を知ることだという結論に達します。
あなたの若い日に、あなたの創造者を覚えよ。(伝道12:1)
結局のところ、もうすべてが聞かされていることだ。神を恐れよ。 神の命令を守れ。これが人間にとってすべてである。神は、善であれ悪であれ、すべての 隠れたことについて、すべてのわざをさばかれるからだ。伝道12:13〜14
神に創られた私たちにとって、最も重要なことは、創り主なる神様に立ち返ることです。 伯父は20年寝たきりの生活を強いられましたが、創り主なる神様に立ち返り、天国に 凱旋されたことを、心から喜びたいと思います。